「一番」っていう言葉はそう引き出せるものじゃない。それを貰いたい。『ラブライブ!』で活動されている同人作家さんへインタビュー! 第6回目はサークル「矢澤三節棍」のだがめさんです。
だがめさんに気になるあれやこれを聞きました! 「一番」っていう言葉はそう引き出せるものじゃない。それを貰いたい。だがめ |キクヨ – Spread the interesting Dojin works.
06

だがめ (矢澤三節棍)

「一番」っていう言葉はそう引き出せるものじゃない。それを貰いたい。

『ラブライブ!』で活動されている同人作家さんへインタビュー! 第6回目はサークル「矢澤三節棍」のだがめさんです。
だがめさんに気になるあれやこれを聞きました!

hyoushi-eden_s

ペンネームとサークル名

ペンネームの由来をお聞きしてもいいですか。

ペンネームは、リーチャさんっていう慕っていた東方二次創作の動画製作者の方がいて、その方のスティッカム配信の時に当時使っていたハンドルネームが嫌だなと思って適当に打ったんですよ。僕昔から生き物のカメが好きで。大学の研究でもカメをやっていたんですけど。よくある自画像とか、(自分から)イメージする動物みたいなのがカメだったんです。それでちょっとこう自分を卑下する感じで駄亀って適当に打ったらそれで覚えて貰っちゃって、変えるに変えられなくなったっていう(笑)。それ以来ずっとこの名前ですね。いい加減変えたいっちゃ変えたいんですけど、あまりにもこれで周りと絡みすぎちゃって。

もう変えられないですか?

変えられない感じですね。まあ濁音付いてますし、響きも悪くないからいいやって思っちゃう(笑)。ノリで決まっちゃいましたね。

サークルの名前は何で「矢澤三節棍」なんですか?

サークルの名前は、僕とまぐもさんと読者の方で3つの節になって『ラブライブ!』同人業界に殴り込みをかけようと意気込みを入れていたのでは、全然なくて。

なくて(笑)。

『ラブライブ!』を教えてくださった方がいて。その人に、まぐもさんと二人で『ラブライブ!』のサークルを作るという話になった時に、サークル名を考えてくれとふっかけて(笑)。でいくつか候補が挙がった中にヤベえヤツがあるって話になって。満場一致で「矢澤三節棍」に決まった感じですね。

命名して頂いた訳ですね。

おかげさまでこのサークル名で買って頂いたりというパターンもあったりして。「ファンキーなサークル名だから買ってみたら、中身とのギャップがやばかった」みたいな。よく言われるのがそれですね。サークル名からは想像出来ない内容だと。

ギャグなのかと思いますもんね。

そうそうそう。三節棍って(笑)。だから今では本当にこのサークル名でよかったと思っています。

ちなみにその時他の候補とかは憶えてますか?

他の候補は、正確なのは覚えてないですけど「にこちゃんがサークルクラッシュする」みたいなニュアンスの名前とか。とにかく破壊的なネーミングが多かったですけど…いいサークル名を付けて頂きました。ただ候補を挙げてくださいっていう話の振り方が雑だったんで、そこはちょっと申し訳なかったかなと。

いいサークル名ですよね。覚えやすいですし。

何よりインパクトが凄い。自分でも意味わかんないっていう(笑)。

rakisute1

同人活動について

ラブライブ以前はどちらで活動されていたんですか? 『まどマギ』で出したのは拝見したんですが。

初めて出した本は『まどマギ』の本で、その時に『らき☆すた』のコピー本も一緒に出してたんですけど、それが個人では最初。
実はその前にリーチャさんの『ちっこい咲夜さん』ていう動画の三次創作合同があったんですよ。そこに寄稿したのが多分ちゃんと描いた漫画は初めてかな。これもpixivに一応出してるんですけどね。そのあとはもう、『まどマギ』で1回コピー誌出したぐらいで、特に何も描いてなかったですね。

じゃあそれから『まどマギ』をやって。

(ちっさくで)1作やって、『まどマギ』と『らき☆すた』本を出して、その後『まどマギ』のコピー誌出して。その後にオフセット本で作り直すはずだったんですけど冬コミに落ちて、まあいいやみたいになって結局出さずに(笑)。

イベント落ちるとダメですよね。

そうですね、いつかその話も描きたいなと思ってるんですけど、多分描かないだろうなって(笑)。

漫画は昔から描かれてたんですか?

いや、僕漫画は本当に全然描いてなくて。高校の時に『らき☆すた』を知って、その頃から絵をちゃんと描き始めて。大学に入ってから漫画を描き始めたのかな。だから、絵をずっと描いてきましたとか、昔から漫画を描いてきたんですみたいな、そういう感じではないです。好きな漫画の絵をみんなで描くみたいのが、小学生・中学生であるじゃないですか。僕もそういった感じで、ちょこちょこ描いてたんですけど、趣味でひとりで描くとかじゃなくて。周りの上手い子に「あ、上手いね!じゃあ僕も描いてみよう」みたいなことはありましたけど。

普段から描いてます~とか、そういうことではないんですね。

あー、僕はもう完全に『らき☆すた』ですね。『らき☆すた』観るまではオタクだという自覚が無かったんで。アニメはもう、ホント子供だから観てたくらいの感じで。

『らき☆すた』ですか。

『らき☆すた』が全て。たまたま夜テレビを点けたらをやっていて、一瞬で心を奪われて。それから他の事はどうでもいいくらい『らき☆すた』ですね。

それはヤバイ

だいぶヤバイ(笑)。周りが引くくらい。

hikagekurokai

ラブライブ!

『ラブライブ!』にハマッたきっかけというのは?

サークル名を考えて下さった方が、ツイッターで凄い薦めてて。そもそもその人が矢澤押しだったんですよ。で、矢澤にこから『ラブライブ!』に入ったんです。丁度テレビを点けたのがアニメ1期の3話だったと思うんですよね。ヤベえぞってなって。でも1期観てた時はそんなにハマってなくて。「にこ襲来」でやっぱにこちゃんいいじゃん、とはなってたんですけど、1期が終わった段階では普通に面白いアニメ枠でしかなかったです。終わったのが2013年の4月ですよね。で、ターニングポイントみたいなのが2つあって。1つはやっぱり『スクフェス』なんです。僕は2013年4月から新社会人だったんですけど、ちょうど『スクフェス』が始まった時期で。だからそのストレスのはけ口を『スクフェス』に。

(笑)。

通勤の時間にひたすら『スクフェス』みたいな。だから、一番最初の「sweet&sweet holiday」も『スクフェス』の印象がやたら強かったり、次のイベントのにこのパンダのヤツは2枚取りちゃんとしてたり。っていうので『スクフェス』でアニメ前の曲とかを知って。それと、(2つ目は)大学の先輩たちに、アニメがきっかけで知り合ったんですよ。1個とか2個上の先輩たちとたまたまアニメの話をしてて、それ経由でもっと年上の先輩たちの飲み会とかに誘われるようになったんです。そこで、アニメ総選挙というのを有志でやっていて。そのクールの面白かったアニメを皆で投票してランキング付けよう、みたいな。そのランキングで『ラブライブ!』はそのクールの1位になっていて。オープニング枠、エンディング枠とストーリー枠の3部門で。で、オープニング枠1位で『僕今』が流れた瞬間に全員で踊りだして。僕、踊るなんて全然出来なかったんで、やべえ!ってなって、(練習して)「僕今」を踊れるようになったんです。そこから周り皆が『ラブライブ!』にやたらハマっていって、それが凄い楽しかったんですよ。『ラブライブ!』のよさって作品とか曲のよさもあると思うんですけど、観た人皆で一緒に盛り上がれるところがあると思うんです。一緒の時間を楽しめるというか。それで一気に『ラブライブ!』が大好きになってきたという感じですね。

踊れるんですか?

踊れるようになりましたね。その「僕今」の件で、自主練習し始めたんですよ。だから「僕今」は踊れるし、ナンバリングは大体踊れますね。「ぼららら」「スノハレ」「夏色」「もっぎゅー」「ワンダラ」も「ミュースタ」も踊れるし、後は「スタダ」は大体踊れるのかな。それから「ススメ」「ノーブラ」。後は「Beat in Angel」はちょっと練習しつつ、「Anemone heart」は大して振り付け無いですけど一応、とかとか。最近だと「Future style」練習してたりとか。

なるほど。

その先輩たちとの飲み会で、皆で騒いで踊っているうちにそうやって踊るのが定番になって、別に『ラブライブ!』に限った話ではないんですけど。(その場で即興で)エンディング映像の再現とかをする人たちなので(笑)。なにが凄いって、その先輩たちの半数以上は既に結婚しているっていう。最近流行りのリア充とオタクのハイブリットな人達なんですよ。あんな大人に、俺はなりたい。

hyoshi

『re:STRAT』表紙

好きな曲

『ラブライブ!』で好きな曲はなんですか?

「僕今」ですね。

それはどうしてですか?

何か、やっぱ全部の始まりだし、節目節目で使われてるし。印象がやたら強いのと、あと歌詞がやっぱ一番好きですね。凄い勇気をくれる。だから、『ラブライブ!』っていったら、「僕今」って言うぐらいになってます。あとはやっぱ漫画描いた時のイメソンにしてたのが印象強くなっちゃって「ラブピ」。あと「ノーブラ」と「ぼららら」と「そして最後のページには」ですね。「Happy maker!」とか「ススメ」とか「えんじぇー(Angelic Angel)」とかも好きなんですけど、全部言ったらなぁ…止めときますか(笑)。(やっぱり)「僕今」ですね。

ところで、音楽がお好きなんですか? この表紙(『re:STRAT』)とか。

……ああ、Gorillazね。これはでもちょっとやむを得ない事情があってGorillazをパロったんですけど。

やむを得ない事情?

バストアップだけって楽ですよね(笑)。

(笑)。別にパロディでなくてもいいんじゃ。

(笑)。いや、何かのパロディにすると、ほら「あっ!」と思ってもらえるじゃないですか。

「あっ!」って思いました。

うん、2作目の本も実はパロディですよ。ACIDMANのあの、シングルのジャケットだかPVだかのシーンのパロです、すげえイメージ通りだったんで。音楽はそれこそさっきの、何度も出てくるんですけど、東方二次創作のリーチャさんが動画で使っていた曲で、すげえよいのがあったりして。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTをそれで知って、もう大好きになって。それが大学の時なんですけど。そればっか聴いていて。それ経由でやっぱ結構いろいろ聴くようになって、っていう感じですね。洋楽は80年代のを結構聴きますけど、CMソングで使われてたのとか、ディスコ曲とか。後は有名どころをちょこちょこ聴いてる感じです。エモいのが好きですね。何かこう叙情的というか感情的な曲。

なるほど。

一番好きな曲はROSSOって、ミッシェルのチバユウスケがやっていたバンドの「1000のタンバリン」って曲なんですけど。凄いいい曲なんですよね。

漫画とかアニメとか

漫画とか読まれます?

漫画結構読みますよ。沢山読みますし、大好きです。
……『ハガレン(鋼の錬金術師)』、多分『ハガレン』の絵は大分影響を受けてると思う。そんなに「ハガレン」の絵を描いてる自覚も無いんですけど。一番は『らき☆すた』ですけどね。

『らき☆すた』の影響は見られないように見えますが……。

ぇえー、オカシイでしょ!!(笑) 女の子の描き方を俺、『らき☆すた』で学んだといっても過言では無い。でも可愛い絵が苦手なんですよ。頑張って『らき☆すた』の絵を描こうとしたけど、どうしても満足いかなくて挫折したクチなんで、僕は。だから漫画はそこらへん、熱い少年漫画が好きですね。ジャンプは買ってますし。『ヒロアカ』熱いですよね? 僕はなんかこう、やっぱセリフとか展開で見ちゃいますねぇ。『ハガレン』『G戦(G戦場ヘブンズドア)』『トライガンマキシマム』が僕の中では三大好きな漫画かな。

『G戦』っぽさはあるなという気がしたんですけど。

後で見返したら『少女ファイト』とか、だいぶまんまなところがあったりして。「あ、やべ!」って思ったりして(笑)。

(笑)。

日本橋ヨヲコ先生の漫画は凄いですよ、やっぱ。セリフとか感情。人間的な感情がこうドカン! ってなるのが好きですね。衝動とか情熱とかいろいろあるじゃないですか。そういうのが無いと、面白くない。「君達が描く必然が無いマンガなどいらない」って『G戦』の阿久田編集長が言ってたんですよ。多分そういうもんかなと。

rakisute2

好きなアニメとかは?

『らき☆すた』!!(笑)。

それは先ほど伺ったので、具体的にここがよいとか。

え? 全部。

全部ですか。

まあ、アニメ『らき☆すた』から入ったんですけど、僕は原作至上主義なので。アニメにはいろいろと物申したいところももちろんあります。敢えて言わないですけど。『らき☆すた』の話をすると、残りの時間全部使うんで。

じゃあ今回は聞かないです。飛ばします。

『らき☆すた』はね、もう……。好きなアニメは『らき☆すた』。あとはね『ゆゆゆ(結城友奈は勇者である)』とか、『ブラック★ロックシューター』が凄い好きですね。ノイタミナの。あれも女子中学生が自分の感情をぶつけにぶつけまくるアニメなんですけど。あと『まどマギ(魔法少女まどか☆マギカ)』。……女の子アニメばかりですね(笑)。しかもみんな可哀想な目に合ってる気がするな、女の子が。主に女子中学生が。ヤバイな、ちょっと。ヤバイ人みたい。

(笑)。

ホントに『ゆゆゆ』も『まどマギ』も『ブラック★ロックシューター』も女子中学生が酷いことになるアニメなんで、そういうのがよいですね。『GJ部』も好きですけどね。

お、全然違う感じですね(笑)。

可愛いのが好きですから、普通に(笑)

アニメはよく観ている感じですか?

その、さっき言った先輩達の総選挙があるんで、観れるものは観たいんですけど。でもあの、そんなに「アニメが無いと!」ということでは多分ないんでしょう。やっぱ漫画のほうが好きなんで。最近だと『オルフェンズ(機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ)』が面白かったですね。

ちなみにその他、ご趣味などありましたら。

あと僕、カメが好きなので。

カメ飼ってるんですか?

パンケーキガメってカメを飼ってますね。昔だったら、趣味はカメですって言ってたんですけど、卒論でカメの研究して、一段落して今は別にそんなに。

飼ってるのに。

いや、だから趣味でカメの研究とか、本を読んで、みたいなことは、今はそんなにしてない。昔はもうホントにカメ含め爬虫類。生き物が好きなんですよ。大学も生物学部でしたし。だから、フィールドワークをして、自然観察して、生き物採集して、みたいなことをしましたね。奄美とか西表とかに行って天然記念物探しに行ったり。アマミノクロウサギとかイリオモテヤマネコとかヤンバルクイナとかそこら辺を探しに。藤岡弘探検隊みたいな。…それは趣味って言えるのかな?(笑)

rakisute3

にこ推し

ちなみに、推しはにこちゃんなんですよね。

観始めた時点からにこ推しだったので。にこから入ったクチですね、『ラブライブ!』には。

にこちゃんの魅力は?

人間的な所ですか…そこですよね。みんなにこまきだったり、可愛いにこちゃんをピックアップしがちじゃないですか。僕がにこに惹かれているのは、漢気というかアイドル哲学のところなんですよ。だから、カッコイイにこが好きだし、カッコイイにこを描きたいです。『可愛い』が苦手なんですよ、僕。

アイドル哲学。

何かもうそれを描いている感じ。ていうか矢澤にこのことを描こうとすると、どうしてもこう、「アイドルとはかく在るべし」みたいなのを描かざるを得なくなるんですよ。それってこう…今まで昔の偉い人達が散々言ってるのと同じことを言わせちゃってもつまんないんですよ。だから『Inner Flower』で喋ったセンターの資格みたいなのは必死に考えて何とか自分の言葉にして。だからこれ、元ネタが無いんですよ。……いや、分かんないです、もしかしてどこかで同じ様なこと言っているのがあるかも知れないですけど(笑)。どうしてセンターは輝くのか、自分の頭の中に独自理論を構築しないといけないんです。こう何か、自分の心の中にあるべきアイドル像ってのがどんどん出来てるのが不思議ですよね。アイドルじゃねーし、俺(笑)。

にこになりきっていますね。

いや、でも漫画描くのってそういうもんですよ多分。共感して、その他人になれないと描けないじゃないですか。『G戦場ヘブンズドア』っていう漫画があって、「漫画を描くと誰の気持ちにもなれてしまう」っていうセリフがあるんですよね。多分そういうものだと思うんですよ。主人公なり何なり、キャラに本当になりきるというより、思考の仕方を限りなく近づけるというか。なりきるでも間違いじゃないとは思うんですけど。そのキャラがいう言葉に必然性が無いと、描いてて、読んでて「うん?」ってなっちゃうじゃないですか。そういうセリフをちゃんと喋らせたいんですよね。ちょっと僕は自分の思考を、むしろ反映し過ぎてると思うんですけど…。にこじゃないと言えないセリフとかあるじゃないですか。そういうのを描きたいから、セリフ選びが多分一番時間がかかる。ネタもだって、あの…たとえば漫画なりテレビを観ている時に、そのお話の登場人物に共感してる筈なのに、原稿やってる時期だったりすると、頭の中で自分が創作を進めている方のキャラに(場面が)パッと切り替わってそっちのキャラが頭の中で喋りだすんですよ。…全然違う……あのうーん…、シーンとかセリフだけがポンと浮かぶんですよ。で、どんどん喋りだすから、忘れないようにメモって、何でそういうシーンになるのかというのを繋いでいく感じ。何でそいつがそう喋ったのか、かな。なりきるんですかね? でも多分皆そうなんじゃないかなと思うんですよね。だってそうじゃないと、セリフ描けないじゃないですか。ただ言いたいセリフ言わせてるだけだったらお話しにならないじゃないですか。

なるほど。

『InnerFrower』より

『Inner Frower』より

絵は好きじゃない

『Inner Flower』は短かったし、セリフも最初の段階で凄いまとまってたんで。実は、ネームの段階では終盤の展開が違ったんです。はじめは9人全員集まるはずだったんですけど、やめて、花陽にセリフを言わせることにしたんですよ。

それは何故ですか?

身も蓋も無い言い方すると、9人描くのが面倒くさくなったっていう(笑)。でも、やってるうちに何かちょっと違うなって思ったんですよ。これ(最初の案)、にこがキメてるんですよね、最後まで。それだと花陽を主人公にした時に、花陽の心境に変化が無いじゃないですか。だから結局花陽にセリフを言わせることにした。結果オーライですね。そうしてよかった。

ほとんど完成したものと変わらないですね。

そうですね。『Inner Flower』はほとんど最初から最後までブレなく描けたので、話も主題も短いですし。だからほんとに分かりやすく短くコンパクトに纏められてるんですよね。コレをねえ、どう倒すか。

倒すというと、よく出来ているということですか?

まあ、アラをあげ始めたらきりが無いんですけど、綺麗に纏まってるんですよ『Inner Flower』は。いろんな人に褒めてもらったんで、今回どうしてもコイツを超えなきゃいけなかったんです。その前の『にこちゃん』で描いた『夢の彼方』っていう漫画も個人的に結構気に入っていて。展開が熱く出来たんです。自分的にはこれとこれをどうしても倒さないといけなかったんですよ。だから意図的にセルフオマージュじゃないですけど、それっぽいシーンを混ぜつつ描いたのが一番新しいやつ(『追想のエデン』)。これで過去作を倒さなきゃいけなかったんです。

倒せましたか?

まあ、何とかっていう感じですね。やっと武器になるようなものが描けたかなって。厚さも7ミリありますんで、これで殴れば誰でも倒せる(笑)。

薄い本じゃないですもんね(笑)。

角とか超痛いですからね(笑)。

InnerFrower12

『Inner Frower』より


InnerFrolerP14

『Inner Frower』より

凄い勢いですよね。

良くも悪くも。うーん、僕ねえやっぱり好きじゃないんですよね絵を描くの。

え?

漫画は好きだし、脚本書くのも凄い大好きで。でも『ラブライブ!』同人を描き始めてからようやく自覚したんですけど、俺、絵を描くのは好きじゃないなって。

(笑)。

いやほんとにほんとに。どうしても必要だから描いてるだけな部分があって。脚本とかセリフとかシーンに必要だからいろいろ考えて試行錯誤して描くんですけど、絵を単体で好きかと言ったら、そんなに好きでもない。最近はイラストとかも描かないし。だからほんと最初1作目、2作目ぐらいの時はあの、極端な言い方すると、絵なんてどうでもいい、ぐらいな感じだったんですよ。話さえ、伝えたいことさえ伝わればいいやって。で、気持ちを乗せるのを優先してしまっているから雑だし、背景も無いし、白いし、っていう。

『夢の彼方』より

『夢の彼方』より

けど今回は描いててずっと「絵上手くなりてえ」と。画力があったり、表現力というか、(それがあると)伝えられるものが格段に増えるっていう。沢山の人に見て貰えるんですよ。アイドルで言えば、脚本が歌であり歌詞であり曲であったりするなら、絵はダンスかと思うんですよね。ダンスが下手くそでも、伝わるものはあるし。歌が下手でもダンスが下手でも、笑顔を頑張って、気持ちを歌に乗せれば、届くものは届くじゃないですか。でもダンスが上手かったり、歌が上手かったりすれば、もっと伝わりやすくなるし、いろんな人にも見て貰えるし。今回描いていて、すごい歌もダンスも上手くなりたい、上達していきたいなと思いました。だから、すげえ久々に絵を練習しようと思ってます。それこそ『ラブライブ!』を描くぐらいまでは嫌々練習をしていた感じなんですよ。『らき☆すた』の絵を描いていた頃だって『らき☆すた』の絵を描きたかっただけで、絵そのものが好きかと言ったら多分俺はそんなに好きじゃなかったんでしょうね、当時から。だから、他のいわゆる同人描きだったり、漫画家さんだったりイラストレーターさんだったりが、楽しんで絵を描いてるのだとしたら、俺はそれには遠く及ばない。そんなに胸を張って絵が好きですなんて言える筈が無いんですよね。だから下手くそなんですよ(笑)。

絵というより、話がメインなんですね。

話がメインですね。ただ、もちろん話の為に必要な絵はあって、そこに気持ちとか言いたいことを乗せないといけないじゃないですか。だから必ずしも丁寧に綺麗に描けばいい訳ではない。表現で、敢えて綺麗に描いてないところももちろんあります。

追想のエデン9

『追想のエデン』より

追想のエデン14

『追想のエデン』より

漫画について

漫画を描く上で、気をつけてる、ここに一番気を払っているみたいなことはありますか? 力を入れているトコロでもいいですけど。

うーん……感情とセリフを逃がさないことかな。あの、思いついたセリフとか、メモ書きしとかないと忘れるじゃないですか。その時のキャラの心境をこう何か、ふわっとさせちゃわないようにしてますかね。だからあの、『追想』の前半の、『偶像に至るエラト』とかもう、描いててひたすら辛さしかなかったですもん。ずっと矢澤の心境に共感してないと描けなかったんで。(書きながら)なんで矢澤好きなのに、こんな矢澤にこをいじめてるんだろうって(笑)。そういう感情を乗せるのを、やっぱ気をつけてるかなあ。あとは目の描写。気が付くと目ばっかり描いちゃうんです。目に一番感情が乗ると思うんですよ。

『偶像に至るエラト』より

『偶像へ至るエラト』より

確かに。(パラパラめくって)目ばかり描いてますね。

かなあ、気をつけてるところ。「丁寧に」とか「観やすい画面を」みたいなよくある言葉が一切浮かばない(笑)。気持ちを乗せることですかね。いや、逆にそれしか武器が無いのかもしれない。『アーユーハッピーメーカー』の時に頑張って作画をやったんですよ。確か、綺麗にやろうと思って。けどこれ、話まとまらなくって。で、ショート・ショートみたいな話になっちゃったんです。綺麗に描きゃいいもんじゃないなと。確かに絵は綺麗に描いてるんですけど、全体的にセリフが薄っぺらいんですよ、これ。穂乃果がね、掴めなかったんですよね。だから穂乃果はあんまりセリフ言ってない。結局にこがこう、なんかそれっぽいことを言ってるだけになってるから。答えが出なかった末の苦肉の策がコレなんで、この話は俺、あんまり受け入れたくないんですよね。

nicohanadi

話を伺っていると、疲れそうですね、描くの。

超疲れる(笑)。普通に徹夜したときには翌日体調崩したりはしないんですけど、描いた後は頭痛と吐き気で死にそうになりますからね。徹夜の影響もありますけど。疲れますよ、なんだかんだ言って。肉体労働だと思ってます。

シンクロして描いてるからじゃないですか?

多分。うーん…でもストーリーもの描いてる人って多分皆そんな感じじゃないかと思うんですけど、違うんですかね? シンクロしないと描けないと思うんですよね。

なるほど。

(絵を描く上で)気をつけてることはそうかもしれないですけど、こうなったらいいなっていうのは、「一番」になりたい。全体の一番じゃなくて、誰かの中の一番になりたいんですよね。感想を下さる方々の、沢山じゃなくてもいるじゃないですか。その人の中で、例えば「今回の即売会で一番好きです」とか、「今までの中で一番良かったです」みたいなことを言ってもらえたら、ホントにそれが一番嬉しいなって。一番って嘘付けないじゃないですか。「好きです」とか「面白かったです」は、何にでも言えちゃうんですよね。けど一番っていう言葉はそう引き出せるものじゃない。それを貰いたい。

「一番」。

その「一番」っていう評価をたった一人でもいいから貰えたら、すごい嬉しい……からそうなるように、セリフも描写も、とにかく読んだ人、読んだその向こう側の読者に刺さるように色々考えてやってますね。後に残らないなんて意味無いじゃないですか、多分。読後感あっさりして、その次の瞬間には忘れちゃうようなものだったら、描いてる意味無いと思うんですよね。毒にも薬にもならない話なんて、ねえ? つまんないですよ、そんなもの。絵にも自信無いし、話作りっていうか、脚本演出が上手いわけでもないんだったら、せめて記憶には残さないと。別に、大勢に読んで貰いたいとかではないけど、読んだ人の心には残ってほしいなぁと思います。

カッコイイですね。

ふふふ(笑)。いやあ、それですよ。突き刺さんないと、読んだ人の心には。突き刺さるように言葉は選んでる自覚はありますけど。

今回の「追想のエデン」で言うと突き刺さるのは……。

終盤の花陽の言葉とか、そもそも矢澤にこに突き刺さなくちゃいけないから。全部刺すように選んでるつもりなんですけど、終盤は特に。どのセリフが誰に突き刺さるかは分からないですけどね。前半の最後のほうのツバサのセリフとかもとにかくにこを痛めつけるセリフだったり。あんなのツバサに言われたら普通折れちゃうでしょ。俺ならですけど。

それは読者にじゃなくて?

読者もキャラに共感して読むはずだから、キャラに突き刺すということは、読んだ人にも突き刺さるんじゃないですか? 何かくさいですね、このセリフ(笑)。

追想のエデン12

『追想のエデン』より

追想のエデン20

『追想のエデン』より

中の人

ちなみにだがめさんは、誰か実際のアイドルを好きになったりとかはありますか?

全然無い…あ、でも『らき☆すた≒おん☆すて』という『らき☆すた』のミュージカルがあったんですけど、それの主演の酒井蘭さんはずっと応援はしてますね。でも今はアイドルって感じではないです。舞台の役者やったりしてるほうが多いんで、ドルオタではないんです。あとはそれこそ生モノのμ’sちゃんたちくらいかな?それから七森中ごらく部とかですかね。だから、ファン心理は分かりますよ、何となく。

μ’sの中の人では誰が好きですか。

シカさんですね、そらまるよりも。シカさんはえっと……狂ってるんですよ(笑)。一番最初にこの人ヤベえなと思ったのは、ワンダラの衣装を着てたときのニコ生なんで、結構昔だと思うんですけど。お便り紹介で、「『レトルトイレットさん』から頂ました。どんなトイレなんでしょう?笑」みたいな返しを平然とやっていて、「(直感的に)やべえこの人…」と思って。それで興味を持って『俺の鹿がこんなに◯◯◯な訳がない』のダイジェスト版をYoutubeで観て。根は暗いけど、誰かの人前に立ったら、こう、はっちゃけるって、すごい面白い人だと思うし、あと何より可愛いし。

可愛いですね。

(好きなのは)シカさん、みもりんかな、あとうっちー。うっちーはあの、アイドルとして端的な「好き」っていうよりも、カッコイイですよね。生き様。

うっちーカッコイイですよね。

内田彩さんの姿勢はカッコイイです。プロだなって感じしますよ。あと、ダンスが好き。二次元的なダンスをするんですけどね、切れが良くって。三森さんは本当にこう、上手な綺麗なダンスを踊るんですけど、内田さんは動きがいい意味でブってるっていうか。可愛い動きをするんですよ、アイドル然とした。女の子的な、美しいじゃなくって何か……「Anemone heart」のダンスを見ると分かるんですけど、内田さんワケが分からない動きしてますから、腰とか。

kokoroarise

最後に

じゃあ読者へのメッセージを……

いつもありがとうございますと、本当にこれからもよろしくお願いします。次作も読んでね!

だがめさん、ありがとうございました!