ぴこうさ (コタツの中)
1コマでも笑ってしまったら僕の勝ち
『ラブライブ!』で活動されている同人作家さんへインタビュー! 第9回目はサークル「コタツの中」のぴこうささんです。
「PKE」「やみつきおかし」など可愛くてコミカルな作品を発表されているぴこうささんに気になるあれやこれを聞きました!
ペンネーム
まず、ペンネームからお聞きしたいのですが。
子供の頃に人形遊びが好きだったんです。小学校とかそのあたりに兄弟とかと、オリジナルのキャラクターみたいなのを作って、会話させる。それで出てきたうさぎのキャラクターが「ぴこうさ」。
その頃から漫画は描かれてたんですか?
漫画はもう、小学校の頃からチラシの裏とかに描いていて兄弟内で見せ合って楽しむみたいな。でも本格的にちゃんと漫画のルールとかそういうのを学んで描き始めたのは、高校の頃ですね。
漫画の描き方はどうやって学習したんですか?
親が漫画好きだったんで、小さい頃から家には常に漫画がある状態で。好きな漫画の絵柄とかノリを真似たりして。小学生の頃、コロコロコミックとか周りで流行ってたんで、すごい読んでました。作風とかも多分自然にコロコロとか、当時の色んなギャグとかを参考にしてたと思うんです。
コロコロではどんな漫画を読んでましたか。
当時はですね『学級王ヤマザキ』とか『うちゅう人 田中太郎』とか。下品なネタとか好きだったですよね。
でも、特に今そういうギャグを描いているわけではないですね。
そうですね、ああいう極端なギャグ漫画は描かず。少女漫画って言ったらいいか。母親の影響なんですけど。家に少女漫画が多かったんですよ。だから、本格的に描き始めてからは、女の子の読むものと避けてた少女漫画に目が行くようになって。「花とゆめ」とか「flowers」とかそこら辺の本をブックオフとかで買い漁って。ただ勢いだけのギャグ漫画っていうだけじゃなくて、ひとつのストーリーとしてちょっと恋愛があったり、感動があったり。そういうのを作品にしたいなって思いましたね。
家に漫画がたくさんあったということですけど、どんな漫画が好きですか? お気に入りの漫画とか。
当時からあったヤツだったら、少女漫画で言えば『パタリロ!』とか。結構古いヤツですけど(笑)。あと佐々木倫子さんの『動物のお医者さん』。あれもちょっと衝撃で。少女漫画の中でもシュールでギャグなノリっていうか。ああいうカオスなところもいいなあと思ってて。結構印象に残ってますね。
他にはありますか?
最近ずっといいなって思ってるのは『空が灰色だから』。阿部共実さんの作品は、可愛い見た目のキャラだけど、内容が鬱だったりとか、モヤモヤするようなところというか、上手く行かないような事とかを題材にしていて。その人間味溢れる、人間臭いところ。人間臭い作品が好きなので、ちょっと参考に。絵とかも気持ちそこに寄っているかもしれないですね。自分が求めているものというか、最終的にこういうのを描けたらなって。すごい憧れというか、持ってますよね。
そういった作品がぴこうささんの漫画に影響してるんですね。
そうですね。だから、ハッピーエンドで終わるようなものは、あんまり読まないですし、自分自身も描かないようにはしてます。綺麗にまとまっちゃうと人間臭さがなくなっちゃうところもあったりするんで。
サークル名
サークル名「コタツの中」の由来をお聞きしてもいいですか?
サークル名ですが、こたつの中でゴロゴロしながらリラックスして作品を読んで欲しい事と作り手の僕もリラックスして肩肘張らずに、作品を作って行きたいという意味が込めれらています。「こたつ」って思い浮かべると温かく・リラックスできる感じがしませんか?
なるほど、そう言われるとリラックスして描いてる感じがあるように思えてきますね……。
そう言っていただけるのは、ありがたいです。
実際には、毎回締切ギリギリで描いているので、相方に「スケジュール管理をしろ!」と怒られています(笑)。
スケジュール管理大変ですよね。
『ラブライブ!』
『ラブライブ!』について伺っていきたいんですけど、『ラブライブ!』はいつ頃知った感じですか?
2014年になるのかな。イベント手伝ってくれている相方から教えてもらったんですけど。その頃『まどマギ』の同人誌描いていて。で、話聞いた後に『ラブライブ!』どんなものかなってことで、そのまあ『スクフェス』だとか、アニメも観たりとか。多分時期的にはほぼ同時だったと思うんですけど。ドハマりしましたね。
相方さんから教わった感じなんですか。
その頃は相方さんもドハマりしてて。他の知り合いなんかもやっていたりして、ちょっと気にはなっていたんですけど。実際やってみたら、これはハマるなと。ゲームとしても面白いし、作品としても楽しめるし。
ちなみにアニメでは、どの話が好きとか、どこにグッと来たとかありますか?
にこ推しなんで、にこの話には基本的に惹かれるトコがあって。2期でいうと、弟とか妹達の前でライブする回。にこは、周りにはすごいきゃぴきゃぴな感じで繕ってますけど、でもそれが……ああいう、真面目なところっていうか真剣なところ、真摯なところ、そこついて行きたいなあって思う魅力があります。
にこ推しなんですね。でも満遍なく描かれてますね。
そうなんですよね(笑)。ホントにどの組み合わせも魅力的で、これもこれも描きたいってなるんで。もちろん、1つのキャラ、ユニットでずっと描いてくのも手なんですけど。いかんせん他のキャラの魅力がそれを許さない(笑)。だから、順番に描こうかなってことで。その時その時で違う組み合わせで描いたりはしてますけど。推しメンはにこで、好きな組み合わせは、のぞえりなんですけど。
のぞえりなんですか。
自身初ラブライブ漫画でPKE描くくらいには好きです。それで、ユニットはリリホワが好きっていう(笑)。
推しとカップリングと、ユニットで分かれてるんですね。
そうなんです、全部分かれてて。
贅沢ですね。
でも、贅沢にしたくなる位それぞれに魅力がある。1つに決めらんないというか。
ありますね。
作品のせいにしてる気はしますけど(笑)。
『ラブライブ!』好きな楽曲
『ラブライブ!』で1番好きな楽曲はなんですか?
前は「スノハレ」1本推しだったんです。アニメで観て感動して好きになったんですけど。「秋のあなたの空遠く」が出てから、ちょっとすごいドハマりして。リリホワの昭和感、昭和とかそういう古臭いの好きなんで。「まあなんて昭和なんだろう(笑)」って。聴いてみたらリリホワどの曲も昭和(笑)。居酒屋とかで流れて欲しいなあとか思う曲で。中でもなんでその曲なのかというと、居酒屋で実際に流れてたんですよ(笑)。
まあ(笑)。
地元の飲み屋で偶然。居酒屋って言ったら、有線とかジャズとか、演歌的なのもあるかもしれないけど。その中でリリホワが選曲されてて。あの時は楽しい酒を飲んでましたね。
絵柄について
ぴこうささんの絵柄って独特だと思うんですけど、この絵柄は昔からの絵柄なんですか?
結構変わってます。『まどマギ×天牌』描いてたあたりで、自分の中でこういうのにしようって。最終的な状態になってますけど。1番最初に描いた同人作品が、実は福本さんの『カイジ』で、「カイ×アカ」っていうBLチックな内容で。そういうのも好きだし、読むんですけど、まさか1番最初の同人がBLになるとは(笑)。当時は今より等身もリアルに近いというか、大人って感じの絵で描いてたんです。内容的に大人向けのヤツを描くからそういう絵柄にしなきゃと思って。でも結局やってることは子供とあんま変わらないというか。
それはどういう……?
自分スヌーピーが好きなんで、作者のチャールズ・M・シュルツさんに感銘受けてるんです。あの人が言うには「大人っていうのは、常識っていう皮を被っただけの子供だ」みたいな。あの人も基本的に子供の絵しか出てこないじゃないですか。そういうところがいいなって思っていて。どんなに大人の世界にあったとしても、結局、子供から来た訳じゃないですか。ルーツは子供にあるから。大人っぽくあるより、子供っぽく描いた方が素が出るというか、地が出るっていうか。さっき言った人間臭いところが出せるかなって。
なるほど。
それプラス、阿部共実さんとかの画風も影響受けたし。等身の背の低いキャラクターに結構惹かれる所があって。じゃあ自分もしてみようってことで、自分の中で試行錯誤しつつ描いて行って。あの絵柄になりましたね。
今の絵柄になるまで、変遷を経てきたんですね。
悩みもしましたけどね。描いてて、自分の中で納得できるっていうのと、周りがある程度親しみ持ってもらわないといけないっていうのと。他の同人作家さんはどうだか分からないけど、もしかしたらパッと「あ、これで良いや」って描いたりする人もいると思いますし。あるいは適当に描いたらいつの間にか出来上がってきたとか。この人はこの絵だみたいなのがあるじゃないですか。「あ、もうこの人だ!」みたいな安心感というか。その中で自分は、なんか無駄に悩んで悩んで。定まらないままフラフラいってた時期は、漫画好きで描いてはいましたけど、ちょっと辛いところはありましたよね。
アイデア
アイデアってどういう感じで思いつきます?
家だと全然浮かばないんですけど、どっか出かけたり、仕事してる時とか。まあ、仕事してる時は仕事の事を考えろっていう話なんですけど(笑)。仕事のちょっとした合間に、頭の中でうはうはと妄想が展開されて。その中で、たとえば『ラブライブ!』キャラが出てきて、面白おかしくやり取りしてる中で、これ自分の中でお気に入りだなって思った物を、作品に描いて出すって感じです。
「PKE」でも、「やみつきおかし」でも、連作というか、巻数重ねてらっしゃいますけど。あれは全部のあらすじがパッと思い浮かんで、それを形にしてる感じなのか。それとも、1巻分のお話が思い浮かんで、その後を後々というかだんだん考えていく感じなのか。全体の構想が先に浮かぶのか、どのように描かれてらっしゃるんですか?
「やみつきおかし」ですけど、あれは、1話完結って感じじゃないってか、続きがあるなって。そういうノリでやってきたヤツなんです。最初の時点で起承転結じゃないですけど、各所に何かポンポンポン、こうして、こうして、こうしてくみたいな。例えばこの巻では、お菓子食べて「こいつ依存してるんじゃね?」って、そういう回にしてから、ドンドン膨らませていくていうか。
ふむふむ。
で、「PKE」の場合は、ホント適当……毎回適当に(笑)。好きに描いてる感じ。1話完結なので。その時その時で、その話を描いてる時はもう次の話を考えてて。ストックが無いっていう事だけはないようにしてるんです。
常にストックがあるのはすごいですね。
脳内ストックですけどね。それを形にするのはある意味自分の中では作業ゲーだと思ってるので。自分が思ってたものをしっかり形に出来たっていうか。「あ、これ面白いなあ」とか自画自賛しながら、でも「絵汚えなあ」とか思いながら(笑)。
アナログ? デジタル?
「PKE」はアナログ時代最後の作品で、結構時間経ってるからpixivで上げるに至ったんです。スキャンして修正して出すんですけど、汚いところ多いっすよ。多分俺のスキャンの機械が問題だと思うんすけど(笑)。鉛筆で描いたヤツが擦れちゃって。そこらへんが残って汚いままで出てくるんで。頑張って修正したつもりでも、見てみると、ちょっと修正跡汚いねえなって。そう思うと、印刷業者さんはすごいなって思いますね。
じゃあ今は原稿はデジタルですか。
そうなんです。ちょうど「PKE」終わった辺りから。表紙はその前までも、パソコン弟を借りてやってたんですけど。流石に自分で買わなきゃって。そこでいいパソコン買って、いっそ本編もデジタルで描こうかということで。そしたらすごい楽で。背景を描くのがすごい苦手で。背景がすごい作品とか「すげえ。俺には描けねえ」と思って。
表紙がいいなあ、と毎回思ってるんです。
表紙、最初適当にしてて。同人活動始めた時に。自分がお客さんになって周りの作品見た時表紙がモノ言うなって。表紙で、絵の上手い人を買うってのもありますけど、表紙で「コイツ絶対面白いぞ!」みたいな感じで、買わせるってのもあるし。
ありますよね。
それまではもう、中の作品だけ描いて表紙は「あ、やべえ表紙描いてねえ」ぐらいだったんですけど。しっかり描かなきゃなって。構図とか考えたり。表紙は基本的にカラーにするんで。色もしっかり塗っていきながら。「PKE」の時も、表紙自体はずっと考えてたんですけど。漫画のひとコマみたいな感じの描き方はしてました。イラストは苦手なんですよね。漫画描いてるのに何言ってんのって感じですけど。イラストって、1枚絵で感動させたりするじゃないですか。面白いことさせないで「おお!」ってなるにはどうしても……。やっぱり何かなきゃいけないのかな? で、結局面白い事するかって(笑)。
組み合わせ
この本「コタツプランタン」を読んで。絵里、海未、凛の組み合わせが珍しいなあと思いました。絵里、海未はともかく、そこに凛ちゃんって珍しくないですか?
珍しいですね。
あと、残りの3人。希、真姫、にこ。
この3人は自分の中でカップリングにしたいなあって思った人で。プランタンをまず先に置いて。その余り組がここに。でも、自分も描いてて思いましたけど。こういう全然関係無い組み合わせもなんかいいなあっていうのはすごい。ラブライブすごいです。
良いですよね、新鮮で。
やっぱ『ラブライブ!』は無限の可能性ありますね。
ありますね。
読書とかなされますか?
読書……。読書はそうですね。最近は自分の作品を良くしていくためにどうやったらと思って、プレゼンテーションが良くなるとか、話す力を付けるとか、話術とか思想とかそこら辺の、勉強する系の本とか買って読みましたね。
へえ……。
あの『マジシャンの秘密』みたいな。そういう人達ってエンターテイナーじゃないですか。自分もまあ一応エンターテイナーを自負してるんで。誰かを楽しませる為にやってたいっていう所はあるんで。そういう意味では参考になるかなと思って買ってみたら、やっぱ参考になって。
そういうのを読んで、漫画に反映させてるんですね。
極力反映させようとしてます。ただ読んだ本の話の内容はもう、90%位忘れてるんですけど(笑)。
(笑)。
読んだ直後はめっちゃ納得するし、いい本だ!って思うんですけど。読み終わって実践出来るかって言うと、アレ、何だっけって(笑)。でもまあ少しずつ。漫画を面白くするのにも繋がるだろうし。
気をつけてるトコロ
漫画を描く上で1番気を付けてるトコロや力をいれてるトコロってあります?
表紙に関してはさっき、ネタばらししちゃいましたけど。中身に関しては、自分の心に響くか。まずそこから考えて。自分に響かなければ周りに響かない可能性も高いなあと。仮に自分に響かなくて、周りに響いても、自分は納得しないし。でも、自分に響いてて周りに響かなくても、取り敢えず自分は響いてるんでいいやってなるじゃないですか(笑)。ゼロにはならないと。
確かに。
そういう意味では、まず先に自分で心に響く、面白い要素があるかって意識して描くように。でも、あんまり詰め込み過ぎると、結局何が言いたいのってなったりはするんで。自分が言いたいことは、大きくひとつ載せる様にはしますけどね。コレもコレもコレもってやってると、1つ1ついい事言っていても「うーん、結局何?」ってなっちゃうんで。そういうのは、ちょっとこう、削ぎ落としてシンプルに。例えば「肉まん」のもまあアレですけど、これも肉まんが好きだから、それをまず1つ表せればいいかな。それと、にこまき。この2人でイチャイチャさせて。そう適当に考えた上で、この2人だったらこういう会話がなされていくってのがドンドン、できていって。だから出来るだけ、シンプルに言いたい事を伝える、描くっていう事を気を付けています。
最後に
読者の方にメッセージなどありましたら。
自分の作品を「知って・見て・読んで」くれて、ありがとうございます。pixivでコメントしてくれたり、イベント等で直接作品の感想とか貰えると本当に感謝の言葉しかないです。「1コマでも笑ってしまったら僕の勝ち」をモットーに、自分が感じた面白いを「漫画」として作っていけたら良いな~と思っています。
ぴこうささん、ありがとうございました!